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サの道よ永久に!


テントサウナ内観
サウナで日本を元気に!笑

~森のサウナ・山紫水明 誕生秘話~

 

これを読むと昨今のサウナムーブメントの何故が分かります。

サウナの話題についていけるようになるでしょう。笑

 

というのも、サウナに入ることも無く、サウナの知識もほとんど無かった私達、それが、とあることをきっかけに、ネットや書籍、メディアなどでサウナについて調べることになりました。

調べていくにつれ、何故今になってサウナが流行りだしたのかを理解できました!

 

これを読むことで何故こんなにサウナが取りざたされているのか、何故サウナーと呼ばれる人たちはそこまでサウナに熱狂するのか、どうすれば本当にサウナを楽しめるようになるのかが、分かる内容になっています。

 

事実、私たちはサウナに対する印象が真反対になり、ホテル内にサウナをオープンし、今後更にサウナ事業をひたむきに取り組むだけでなく、サウナが大好きになってしまい、こんなに素晴らしいサウナの良さを一人でも多くの皆さんに伝えたい、サウナの伝道師のような活動を展開していきたいとまで思うようになったのですから。

 

これを読んで頂ければ、その理由も良く分かると思います。

騙されたと思って読んで下さい!サウナって本当に凄いんです!

 

実際、私達はサウナには全く関心がありませんでした。

世の中は本当に分からないものですね。

 

ここに至るまでに、びっくりする展開が待っていたのです。

それも驚きと発見と出会いの連続でした。

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ここ白山一里野は源泉かけ流しの温泉が自慢。循環や加温をする必要がない最高の温泉。湯温50度、毎分550リットルもの大量の温泉が約10キロもの距離を、白山国立公園の奥深くに位置する山奥の秘湯から脈々とこの一里野の地に注がれ続けてきました。それは44年もの間、まさに動脈のごとくでした。

多くの方がこの貴重な源泉かけ流しの温泉を求めて、遥々この山奥の高原の地に足を運び、白山の恵みの湯に癒されてきたのでした。

それが起きたのは、20211月。感染症が増加の一途を辿り、国が展開するGOTOキャンペーンも中止となり、宿泊予約のキャンセル対応に追われる最中のことでした。

真冬の最中にその温泉が来なくなってしまったのです。

一滴も。。

ヘリコプターを飛ばしての調査と冬山に登っての危険な修繕作業が行われました。しかし、待てど暮らせど、温泉は届きません。奥山に設置してあった重機ショベルカーの燃料も空になってしまい、雪深い山奥ではもはや打つ手もなく、春先まで待つことになってしまいました。こんなことは開湯以来、初めてのことです。

春になり、雪が融け、現地に修繕に行くことが出来れば、温泉がまた届く。それまでの辛抱だ。誰もがそう思ってました。

あのドローンで撮影した写真を見るまでは

春になり、雪解けとともに温泉復旧の為の調査が行われました。その際にドローンで撮影された写真を見て、私達は言葉を失いました。

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写っていたのは、山が大きくえぐられ、山肌がむき出しになった異様な光景。なんと、縦300メートル、200メートルもの大規模な崩落が起きていたのです!

崖を這うようにしてつけられていた道路に埋設されていた温泉の配管は道路と共に吹き飛ばされました。引き裂かれた配管から私たちの大事な温泉が湯気を上げながら崖をつたう様も写っていました。冬に行った修繕作業の後に大きな崩落が起こったのでしょう。

今から60数年前にさかのぼります。私の祖父である山崎信一は脱サラし、地域のみんなと共に急峻な山肌にダイナマイトを使いながら、6がかりで道を切り開らき、その上で2000本もの木の管を繋いで、崖の奥に湧く山奥の秘湯から引っ張り出した温泉。

その温泉を更に一里野まで引湯し、地域のみんなが力を合わせて作り上げた白山一里野温泉。私の母が末期がんで亡くなる直前にどうしても祖父の温泉開発を本にしなければならないと、出版した本のタイトルは「湯の道よ永久に」。そんな思いの詰まった、私達にとって生命線とも言える大切な温泉が無残にも垂れ流しになっている様は心痛に耐えうるものではありませんでした。

湯の道よ永久に ~岩間温泉開発物語~

それからは白山市に陳情を行い、地域は早期の復旧を懇願しましたが、あまりにも規模が大きすぎる為に安全性の確保も難しく、この年は調査するだけで精一杯でした。崩落したのは砂防のための道路であり、これは国が復旧するとなりました。が、それが少なくとも4年はかかるとのことでした。それを待っていたのでは、温泉が来る前に地域は潰れてしまうでしょう。崩落した箇所を空中配管で繋ぐことが提案されましたが、様々な問題から実現が難しそうです。

一体いつになるか分からない温泉の復旧。空っぽになってすっかり冷え切った浴槽を見ながら、途方に暮れる日が続きました。

そんなある日のこと、ある人に「サウナが流行っている」と聞いて、私はびっくりしました。

「え?サウナが流行っている!?」

サウナが流行るということってどういうことだろう?昔からあるサウナが今更にして、流行るってことがあるのか?と疑念の思いしか浮かばす、私は思わず「なんで?」と聞き返しました。目新しいものならいざ知らず、ましてや、サウナという年配の男性が利用するイメージが強く、華やかさもないものが今ごろになって、流行るという要素があるようには思えなかったからです。その人も理由は答えられませんでした。

ネットで検索して調べてみると、大きな広いサウナの中に若い男性と女性が一緒に居て、法被を着た人が大きなうちわを振っている写真が出てきました。サウナに関心のなかった自分にとっては初めて見る光景でした。【ロウリュ】や【アウフグース】など初めて聞く言葉も書かれており、以前のサウナ事情とは幾分違ってきてることが感じられました。

男女で一緒に楽しむことができ、うちわで煽るなどエンタメ性も加わり、それが絵になるものだからメディアが取り上げ、それでサウナというものが見直され、ちょっとしたブームになっているのか?

その時はそれくらいの推測しか出来ませんでした。いずれにしても、流行っているからと言って、サウナが温泉の代わりになるわけでもないだろうし、あまり魅力的にも感じられませんでした。しかし、そこから、意外なものが、私達をサウナに結びつけることになったのです。

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その意外なものとは【グランピング】です。私たちがグランピングに取り組み始めたのは2013年の夏。まだ、国内ではほとんど知られてない頃に、大型の高級テント数台やタープ、ソファやベッド、BBQグリルや焚き火台、キャンプチェアにハンモックなどをおっかなビックリ購入しました。ろあんの裏に広がる森の片隅を「プライベートフォレスト」と称して、そこにテントを設置して、グランピングを始めました。ホテルが行うものとしては国内初の取り組みだったでしょう。当時、じゃらんネットにもグランピングのプランは見当たりませんでした

今やグランピングは全国的に知名度を得て大人気。お陰様でろあんのグランピングも予約が取れないほどとなりました。グランピングの運営はなかなか大変で、そのために何台も何台もテントを購入し、テントの扱いには慣れてきました。

サウナが流行っていると聞いて程なく、今度は「【テントサウナ】というのがある」という事を聞きました。テントの中に薪ストーブを設置して、それで熱を作り、サウナにする、というもので、なるほど、そんな事も可能なんだと感心しました。

テントを湖畔や川のほとりに張り、水風呂の代わりに湖や川に飛び込むというものだということでしたアウトドア好きな人達のレジャーのバリエーションの一つとして考案されたもので、それ自体にそんなに意義があるとは思えませんでした。

そんなある日、空っぽになった物悲しい露天風呂を見ていて、ふと思ったのです。この露天風呂の浴槽の真上にテントを張り、浴槽の中に薪ストーブを入れれば、サウナになるなと。内湯に水を入れれば、水風呂にもなるなと思いました。浴槽内は石造りで高温の熱を発する薪ストーブを設置するにもちょうど良いと思えました。半ば冗談半分にスタッフにも話をしてみましたが、こんなところでサウナをしたところで誰も来てくれないだろう、と思ってました。

そんな折、ある自称サウナーという人に会って話をする機会がありました。その人は先だってテントサウナのイベントを行ったが、それなりに集客があったという話を聞かせてくれました。キャンプブームでもあり、そのようなイベントに反応する人も増えているのかなと思いましたが、あまり関心は湧きませんでした。

その人は富山に「スパアルプス」というサウナがあり、これが全国でも十本の指に入るくらいの人気な施設で全国から遥々富山までサウナに入るために沢山の方が来ていると話してくれました。そのような素晴らしい人気なサウナが富山にあると聞いて驚き、どこがどんな風に素晴らしいサウナなのかと訪ねてみると、サウナ自体はそんなに特別変わったものでもないとの返答でした。では、何が良いのかと尋ねて、帰ってきた返答を聞いて、私は目を丸くしました。

「水風呂の水が地下水の天然水を使用していて、水の質がとても良く、飲める水風呂なんだ!」

「え?水風呂?そっち?しかも水の質?!」

水風呂
サウナ好きは水風呂の温度の低さにこだわるというのを以前、私は雑誌の記事で読んだことがあり、そのようなものだと認識してました。大事なのは温度であり、体を冷やしさえすれば、良いのであって、水の質や飲める飲めないは全く関係のないものだと思っていた私は驚きました。

そして、水がかけ流されている、という事を聞き、はたと気が付きました。

「これって温泉と同じじゃないか?!」

サウナに入り、水風呂に入ると温冷浴の効果から、五感がとても研ぎ澄まされ、様々なことを敏感に感じられるようになり、水の質もとてもよく分かるんだとのことでした。

霊峰白山の奥深くで湧く岩間温泉はその泉質も素晴らしく、量も豊富で温度も高いため、全国でも貴重な【源泉かけ流し】が可能でした。それでも当初、私共のホテルを建設した際には当時の一般的な浴場の建設基準に乗っ取り、循環濾過の設備を設け、常に循環濾過を行いながら、温泉営業を行っておりました。しかし、本当の温泉のあるべき姿を求めて、源泉かけ流しにこだわり、20年ほど前に循環設備を廃止しました。祖父の開発した温泉を最高の状態で提供したいという思いからでした。

そんな風にこだわってきた温泉とサウナの水風呂が実は同じようなものだということを知り、私は驚きました。そして思いました。「ここ一里野から上流には一切、人が住んでない。つまり、最上流に位置している。2702メートルの白山の山頂から流れてくる清らかな天然水で水風呂を作れば、素晴らしいものになるのではないか?」と思いが湧き出てきました。

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ここ白山一里野は【白山国立公園】の入り口に位置しており、ここから先に広がるのは手つかずの大自然。まさに動植物の楽園です。富山のスパアルプスさんでは水の質も公表しており、ヴォルビックなどのミネラルウォーターよりも「硬度」が高いと書かれていました。そこで一里野の水も調べてみると、一里野の水もスパアルプスさんには少し劣るが、ヴォルビックよりも高い硬度をしておるのです!霊峰である白山の霊水が注がれた水風呂が出来れば、それは多くの皆さんを癒してくれるに違いないと更に思いが高まりました。実際、全国のサウナーが憧れ、日本一のサウナと呼び声の高い静岡県の「サウナしきじ」もその水風呂の水の質の良さが決め手のようです。

そして次に話をされた内容に私は思わず笑ってしまいました。水風呂の代わりに雪に飛び込む、【雪ダイブ】というものがあるというのです。(スノーダイブとも言います。)

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雪ダイブはサウナーと呼ばれるサウナ好きの中でも上級者の皆さんでさえ、憧れるほどのもので、なかなか出来る場所がないとのことでした。白山の「白」を象徴する「雪」は白山の素晴らしい恵みの一つです。ここ一里野には世界有数の豪雪地帯である北陸ならではの天然の雪が沢山降り積もり、通常でも2~3メートルの高さまで積もります。ろあんの森林浴露天風呂には毎年、大きな雪の壁が出来上がります。浴槽の前に2メートルを超える雪の壁が出来る露天風呂は全国探してもなかなか無いでしょう。その雪の壁では小さな雪崩が起きて、温泉に雪がなだれ込むことも良くあるほどです。雪ダイブが常設で行える、というところは本当に少ないとのことでした。それも2メートルを超える雪の壁になるので、ほぼ立ったまま、雪に倒れ込んでの雪ダイブが可能です。雪は積もってしばらく経つと固くなりますが、こうなると、雪ダイブもやりづらくなってしまいます。しかし、ここ一里野の冬は雪がしょっちゅう降りますので、他に雪ダイブが出来る施設があっても、ここなら積もりたての新雪で雪ダイブが出来る確率が他の施設よりもかなり高いと言えそうです。積もったばかりの新雪はまさにフワフワの綿のようです。ここにダイブすると、とっても気持ちよさそうで、きっと喜こんでもらえるに違いない、と心がワクワクして来るのを感じました。

でも、この他にまだ驚くことが待っていました。

「サ道」という漫画やドラマをご存知でしょうか?サウナのことを詳しく聞いて驚いた私は、その後、サウナについて、もう少し調べてみたくなりました。「サ道」という漫画がヒットし、それが映画化やドラマ化されており、TVerで見られるとのことを聞き、早速、見てみました。サウナに焦点を当てたドラマの内容はこれまでには無かったもので、原田泰造さんが主役を務めるそのドラマは私にとって、とても新鮮でした。

そしてそのドラマの中のとあるシーンで泰三さんが発した言葉に私はまたキョトンとするのでした。

「やっぱりサウナの主役は、外気浴だ!って改めて実感しましたよ~。」

「えぇ?外気浴が主役?!」

私は耳を疑いました。

「サウナってあの熱い室内が主役じゃなかったのか?しかも外気浴するのって設備も何もない、ただの外ってことじゃないか!?」

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つい最近まで私はこの【外気浴】という言葉すら知りませんでした。それも無理はありません。外気浴はたまにサウナに行くくらいの人であれば、知らない人も多いくらいで、日本ではまだ新しい言葉のようです。実はこれは日本ではサウナにとっての新しい行動様式とも言えるものです。外気浴とは水風呂の後にとる休憩のことで、基本的には浴室内ではなく外に出て外気にあたります。(屋外に出れない施設では浴室内で行います。)高温で蒸された直後、水風呂で一気に冷やされた身体は血流が増加し、自律神経が活性化され、身体調整機能がフル稼働します。その際に身体がポカポカと心地よくなるだけでなく、多幸感をも味わうことがあります。これが2021年の流行語大賞にもノミネートされた「ととのう」と表現される現象なのです。

ちょっと前までその言葉すらも知らなかった私はまたまた驚きました。サウナの主役がサウナ室や水風呂のような施設としてちゃんと設けられているものではなく、外に椅子を置いただけの外気浴だと言うのですから、もう呆気にとられてしまいました。そして、気が付きました。「外気浴の最中にととのい、それがサウナの主役と言うなら、それはサウナをする人にとって最も大切なシーン。その肝心の外気浴を行うシチュエーションも大事なはず。サウナと水風呂の【温冷浴効果】で五感が研ぎ澄まされているから尚更なはず。肌で感じる空気の良し悪し、鼻で感じる匂い、目で見る景色や光、耳で聞く音など、味覚以外の触覚、臭覚、視覚、聴覚の全てが影響する。だとすると、大切になってくるのは、その外気浴の為の環境。それらを左右するのは自然環境なのではないか?」

もともと、ろあんの露天風呂は「森林浴露天風呂 森の湯」という名前です。その名の通り、森林に面しており、「森林浴」と「温泉浴」を同時に楽しめる、というのが売りでした。ろあんの露天風呂の周りは畳敷きになっておりますが、ここで木々が発するマイナスイオンを浴びながら、光合成によって作られた出来立ての新鮮な酸素を吸うという、正真正銘の「森林浴」を楽しみながらの「外気浴」を行って頂ける。「この白山の大自然がサウナを利用する皆様を更なる癒しへと導いてくれるはずだ!」という思いに至ったのです。「ととのう」という最高の状態に至るのに最善の場所になり得るという思いになり、私はもはやワクワクが止められないほどとなりました。

ちなみにこの外気浴というものがちゃんと認識され、行われるようになったのは、ここ十数年のことです。だから、サウナに通う方でも未だにこの言葉を全く知らない方も多いです。というのも、以前はサウナの後に水風呂に入り、水風呂で冷えたら、そのまますぐにサウナ室に逆戻りするというのが一般的な認識でした。実際にサウナ施設で外気浴をする場所すら設けてられてもいませんでした。浴室内でも休めるように浴室内の洗い場の横あたりに椅子を置いてある施設もありましたが、その程度でしかありませんでした。それが最近、露天風呂が作られるようになったことで、その傍らにプラスチックの椅子やベンチなどですが、設置され、そこで外気浴が可能になったことで、水風呂の後にそこで外気浴を行う人が出始めました。しかしながら、この外気浴のシーンこそ、いわゆる「ととのう」という場面であり、この外気浴こそが現在のサウナを象徴し、認知を広げるものとなりました。それとともに外気浴も認知されるようになり、マンガやドラマの「サ道」でも取り上げられて、最近では外気浴の為の場所がしっかりと設けられたり、専用の高級なリラックスチェアなどが設置されるようになったりと施設側の認識も変わってきたところです。

外気浴は最近では更に庭を整備したり、絶景が楽しめたりと、小鳥のさえずりやリラックスミュージックを流したりと、この外気浴の為の環境整備に力を入れるサウナ施設が増えています実際にサウナの本場フィンランドでは外気浴はサウナをする際のとても大切なシーンであり、大自然豊かな場所が好まれます。そういった場所にサウナ施設を設けたりします。私たちにはその為の最適な環境が既にあるという事でまさに瓢箪から駒という思いになりました。

しかし、実はこの他にもサウナで大切なものがあるんです。まだあるのか、といった感じですが、これについては、皆さんもこれは大切だと納得するはずです。私たちはこの点において、他のサウナ施設とは一味も二味も違ったものに出会ったのです。

ロウリュ
「サ道」のドラマでは冒頭から【ロウリュ】のシーンが出てきます。番組中にもロウリュを行う様子がやたらと出てきます。ロウリュは以前のサウナではほとんどなかったサービスですが、それがドラマ内で象徴的に取り上げられるのを目の当たりにし、以前とは状況が変わったのだという事が改めて感じられました。ウリュとは薪ストーブの上に設置された【サウナストーン】に水をかけることで石の熱によりその水分が蒸発して蒸気になります。その蒸気がサウナ室内を満たすことで室内の湿度が上がります。ロウリュはその湿度の高い空気で薪ストーブから放たれた熱を利用者の体に伝わりやすくして、体温を上げる手法です。こうして湿度が高くなるサウナを【ウェットサウナ】と言います。ハワイなどの乾燥した地域では気温が高くてもサラッとしていて、それほど熱く感じず、東南アジア諸国など湿度の高い地域は気温がそれほどでなくても、熱く感じるということと同じであり、「ウェットサウナ」の場合は温度がそれほど高くなくても、体感温度も高く、十分に体を温められるのです。

日本では【ドライサウナ】が一般的です。というのも、電気で加温する電熱設備は水をかけると漏電してしまうので、水をかけることが出来ないものがほとんどです。それで必然的に国内のサウナ室の多くは乾燥した状態のものがほとんどとなり、そういったサウナをドライサウナと言うのです。当初、1964年の東京オリンピックの際にフィンランドが選手村にサウナを設置したことで日本でも広まっていったサウナはもともとフィンランド式で湿度が高い室内で行うウェットサウナでしたが、当初、導入が上手くいかず、あくまでも浴場施設のわき役として捉えられ、短時間で汗をかける高温低湿度の乾式サウナの方が都合が良く、ロウリュをして湿度を上げることを行わないドライサウナとして発展していったようです。今でも本場フィンランドのサウナはもちろん、西洋諸国のサウナではロウリュを頻繁に行い、湿度を上げて体を温めます。

しかし、このロウリュこそが現在の日本のサウナブームのけん引役となったと言っても過言ではありません。ドライサウナではかなり高温になりがちで、あまり快適な環境とは言えず、皮膚や髪も焼けるようになり、喉が痛くなるなど、辛いだけでなく、体に悪い影響もあるほどで、これゆえにサウナが好きではない人も多くなってしまったなど、サウナ業界としてももったいない状況が続いてました。それがやっと日本でもウェットサウナの良さが認識され、現在では日本のサウナもロウリュが出来る施設が増えてきております。実はこのウェットサウナの登場が現在のサウナブームに繋がる最初の一歩となったと言っても過言ではありません。

このロウリュを行う際の「ロウリュ水」には香りを付けることが多く、たいていは桶に入れた水にアロマオイルを垂らして香りを付けます

実はこのロウリュ水こそが他のサウナ施設とは一線を画す私たちのとっておきの秘密兵器と言っても過言ではありません。

ろあんから車で10分のところに【ミントレイノ】というハーブとオルゴールをテーマにした観光施設があります。数年前、ここに【蒸留器】が導入されました。【Earthring(アースリング)】という会社がここで「和ハーブ」の取り組みをしています。特に樹木の枝葉を蒸留しています。白山の森から「杉」や「クロモジ」といった香り豊かなものを蒸留し、アロマオイルを作っています。蒸留器では草木を蒸して蒸気を立ち上げ、それを一気に冷却します。ここで冷却された蒸気は油分と水分に分かれます。このごく少量の油分がアロマオイルです。そして水分の方は【芳香蒸留水】、【アロマウォーター】などと呼ばれます。

このアースリングの皆さんと他の事業で関わることがあり、その際に温泉が来なくなってサウナに取り組むことを考えていると話した時に、このアロマオイル生産時の副産物である芳香蒸留水、アロマウォーターのことを教えて頂きました。私たちのロウリュ水は水にアロマオイルを垂らして香り付けしただけのものではなく、木々を蒸し上げて出来た蒸気から油分を除き、水分だけになったこの芳香する蒸留水、アロマウォーターをロウリュ水として提供しているのです。

一般的なロウリュ水では水にアロマオイルを垂らすことが多いのですが、ある程度の量を垂らさないと香りが付きません。しかし、アロマオイルは少量でもとても高価なもので、豊かな香りにするには費用も相当掛かります。となると、使用するアロマオイルを節約しがちになり、施設によっては、ロウリュでの香りが薄いこともあったりします。

私たちが使用するロウリュ水は【蒸留水】そのものを使用しますので、アロマオイルは使いません。この蒸留水はそれ自体で香りがとても豊かで、とても良い香りです。しかも、ロウリュして立ち上がるこの蒸気には様々な有用な成分も含まれており、それが室内に充満して、肌にも浸透し、体に良い効果を与えるものと思われます。

例えば、クロモジには「リナロール」や「ゲラニオール」いう化粧水に使われる成分が含まれています。リナロールには鎮静効果や抗不安効果、抗菌効果が、ゲラニオールには抗菌や抗カビ、抗酸化作用があり、更には肌のみずみずしさと弾力性の回復や維持に効果があるとされています。バラやローズウッド、ベルガモット、パルマローザなどにも多く含まれているもです。サウナ室内でこのクロモジの蒸留水でロウリュすると、このリナロールやゲラニオールが室内に広がり充満します。それが経皮で肌に浸透し、肌の保湿性を高め、お肌がプルンプルンになるとのことです。女性にとって、まさに「美肌のロウリュ」と言っても過言ではない、とっても素敵なロウリュ水なのです。これが他の施設とは一線を画す私達のとっておきのロウリュの秘密です。

このようにサウナについて学んでいるうちにまたある事実に気が付きました。この素晴らしい事実に、私たちはますますサウナに魅力を感じてしまいました。

というのも、サウナの熱を作るのにはエネルギーが必要です。通常のサウナ施設ではそれを電気で行う事が多いです。それで漏電するなどの理由でロウリュを出来ない施設が多いのですが、本場フィンランドでは、それを原始的な薪を使っての【薪ストーブ】で行うことが多いのです。私たちは温暖化対策のためのCO2排出量削減の目的で、当初から給湯の為に使用していた重油ボイラーから薪ボイラーに切り替え、周囲の白山の森から間伐した木材を使い、私たちが自前で作成しています。これはいわば、「自然エネルギー」であり、「再生可能エネルギー」であります。「自家製エネルギー」と言ったり、「エネルギーの地産地消」とも言えるでしょう。石油燃料などは遠いアラブの地からタンカーで運んできたものです。日本では電気にしても、この石油を使って火力で発電しているものが多いのが現状です。近隣の森から間伐した木材であれば、輸送の為にエネルギーを使うこともないので、環境負荷は極めて少なく、しかも森林は再生する際に二酸化炭素を吸収することから、「気候変動」の対策としても理想的なものであります。

実はサウナに必要なエネルギーはほぼこの薪を使っての熱エネルギーのみです。

そういった観点で見ると、こういったスタイルのサウナはとてもエコなものであると言えます

白山に生い茂る樹木からできた蒸留水のロウリュ、白山のバイオマス利用の薪ストーブによる熱、白山山頂からの清らかな水がかけ流しの水風呂、白山の森で癒される外気浴、とこれら全ては「白山の大自然の恵み」の賜物です。これら自然の産物を活かし、自然の恵みに癒される【ナチュラルなサウナ】は再生可能であり、SDGs】な取り組みとも言えるものです。とても気持ちよく癒され、それでいて、【エコ】でもある。あまりにも出来過ぎで、私達もびっくりしています。

ところがこれで終わりではありません。もう一つの素晴らしい事実に気づくことになるのですが、これが私たちがサウナに大きな意義を感じる一番大事なことです。

もともと、私がサウナに持っていた印象は町中の「娯楽・レジャー」といったイメージでした。ビールが美味しくなるからサウナに行く。お酒が過ぎて、終電も過ぎて、サウナに泊まる。汗を沢山かいて、飲んだお酒を出す。サウナは痩せると思いきや実は痩せない。温浴施設がお客様を飽きさせないための単なるバリエーションの一つにすぎない。機械的な設備によるサービス。自然とは真反対の人工的な設備。体に悪い。と失礼ながら、あまり良いものだと思っていませんでした。対して、温泉入浴には様々な効果があり、温泉自体の効能もあります。でも、サウナは単なる電気で温めた熱い室内で体に無理をかけて、汗を出すだけであり、どちらかと言うと、美味しいビールを飲むために体に無理をかけている、不健康なもの、とまで思っていたのでした。

が、しかし、今回いろいろと調べていくうちに、ここに挙げたものは全て間違っていたと気付かされたのです。実はサウナはとても身体に良いものだということが昨今の科学的研究により、その素晴らしい効果とともに立証されています。サウナの何がそんなに素晴らしく凄いのか、私たちが学んだことを以下にあげます。

サウナに入ると、まず単純に血流が増えます。それに伴い、酸素の供給が高まります。新陳代謝が良くなることで、老廃物や疲労物質の排出に繋がります。これは通常の入浴も同じですが、サウナではその度合いが違います。血管は拡張し、汗腺が開き、大量の汗が出ます。

そこで冷たい水風呂に入ることで開いていた汗腺は一気に閉じ、体の表面の血管も収縮します。この時、体の深部の血管は拡張したままです。水風呂から出て、外気浴をすると、今度は汗腺は閉じたままですが、血管が拡張し、血圧が下がりますが、血管の拡張と収縮がポンプのような作用をもたらし、全身への血流がグンと上がり、毛細血管に至るまで、全身にくまなく酸素が供給されます。この状態で体はポカポカとしてきて、とても心地よい感覚になります。これらは温冷浴の効果ですが、サウナでは温度の落差が大きいので、特にその効果が大きいのです。交感神経と副交感神経の両方を刺激することになり、ホメオスタシスと呼ばれる自律神経の恒常性維持機能が高まり、全身の臓器に好影響をもたらします。

更には脳内の血流も上がり、たくさんの酸素が供給され、サウナや水風呂の際に放出されたアドレナリンやエンドルフィンが作用し、外気浴でセロトニンも放出され、心身ともにとても心地よい状態になります。サウナから水風呂という温度変化に、一部の脳の活動が停止することもあいまって、脳の疲れがすっきりと取れるのです。

更に素晴らしいことに、サウナに入った日は良く眠れます。これはサウナ好きの皆さんが実感しての上での通説ですが、それにはちゃんとした理由があります。まず、サウナに入った後は眠たくなります。サウナで身体に程よいストレスが与えられ温冷交代浴により、血流が増え、新陳代謝が増し、デトックスが促進して、内臓や自律神経がフル稼働します。フル稼働した後には体が休息を求め、眠気を感じるとなるわけです。そこで睡眠を取ると、神経や内臓、脳の疲れが取れて目覚めると、心身の疲れも取れてすっきりし、身体も軽くなり、体の底からエネルギーがみなぎってくるのを感じるとなるわけです

ところが、これだけでありません。サウナに入った後の睡眠はこの睡眠の質がグンと上がるのです。それは脳科学的に立証されています。まず、サウナで体温が上昇することで、眠りに落ちるために重要である脳内ホルモンのセロトニンの量が増加します。セロトニンは幸せホルモンとも言われ、これが不足するとネガティブな思考に陥ったりしますが、現代人はこれが不足しがちです。これがサウナによって増加するのですが、そのセロトニンを材料に脳の松果体で睡眠ホルモンであるメラトニンが作られるのです。このメラトニンの作用もあり、サウナに入った日にはとてもぐっすり眠れるのは、こういった訳があるんです。

実際、これは単なる感覚的なものではなく、これも生態学的に立証されております。というのも、これらの作用により、特に深い睡眠「深睡眠」(徐波睡眠とも言います。)の時間が長くなるのです。この深睡眠はノンレム睡眠の最中に起こるもので、この時に脳が最も休んでいる状態になり、成長ホルモンの放出される量が最大になります。成長ホルモンは成長期だけに必要なものではなく、身体の修復に不可欠なたんぱく質を合成するものです。肌の張りや髪の艶などにも大きく影響します。このように体に好影響をもたらす深い睡眠は単純に睡眠時間を長くすれば、それに比例して長くなるものではなく、浅い睡眠時間が長くなるだけで、深い睡眠を伸ばすのは簡単ではありません。その深睡眠がサウナに入ることで、あっけなく2倍になる程に長くなり、疲れもすっきり取れて、体全体から脳に至るまで好影響をもたらすのです。そして、ここが最も素晴らしいポイントですが、心身ともに元気になるので、日中の仕事や生活の質、パフォーマンスが上がることになり、それが良い結果を生む、ということにもなるのです。つまり、体の調子が良く、仕事をバリバリこなせるので、成績も上がり、収入までもが増える、という事に繋がるというのです。まさに正のスパイラルと言えるでしょう。

実はこの点において、ろあんには素晴らしいアドバンテージがあることに気が付きました。それは客室とベッド、又はお布団です。宿泊施設である私達の施設には当然備わっているものですが、これがとってもいきてくると思うのです。というのも、サウナに入った後の体が本当に回復するのは、その後の睡眠を経てからです。睡眠は体のメンテナンス、修復、回復のための時間です。サウナで血流が増加し、新陳代謝が上がり、人体が持つ身体機能が活性化した状態になりました。でも、まだこの状態では体はボーっとしています。この後に睡眠を取ることにより、身体は最終的に整えられるわけです。それも深い睡眠が素晴らしい回復をもたらしてくれます。ノンレム睡眠中の深睡眠は睡眠の最初に訪れることが多いので、短時間でも目覚めるとすっきり爽快、身体の奥底から元気とやる気が湧いてくる、そんな感じになること請け合いです。サウナの後にベッドや布団にダイブする。これも最高に気持ち良い瞬間です。そのまま眠って頂き、最高の睡眠を得て頂く。これは宿泊施設だからこそ、提供できるサウナの最高のサービスだと思っております。

古来より人々は肉体労働の疲れを温泉入浴を繰り返し行う、【湯治】という形でとってきました。昨今では肉体労働は減り、デジタルな情報化社会の到来により、脳の疲れも以前に比べて増してきておるわけですが、そんな現代社会において、脳の疲れが取れるサウナは救世主のような存在かもしれません。古来の農業や林業が主体であった頃と違って、国民のほとんど会社勤めをするようになった現代の日本社会ではなかなか長期休暇というものが取れません。それで湯治という温泉大国日本ならではの慣習もほとんど消えてしまいましたが、人間の身体を維持するのに長期の療養はとても有用なものであると考えます。現在、【ワーケーション】という仕事を旅先に持ち込むことによって、仕事をしながらも、半分、ヴァケーションのように温泉施設やリゾートに長期滞在することが可能な時代になりました。そうなると、温泉施設などに長期滞在し、朝昼夜と繰り返し温泉が利用でき、仕事をしながらではありますが、まるで湯治をしているような日々を送ることが出来るのです。これを温泉だけでなく、サウナを主体に行う【サウナ湯治】というものがあっても良いのではないかと思えてきました。【健康経営】の機運が高まる昨今、取り組むべきメニューの一つとしてあげられている【ヘルスツーリズム】の中にサウナを盛り込んでみてはどうかなとも思いました。

私たちにとって、サウナは本当に素晴らしい出会いだと思っています。というのも、ろあんはもともと観光やスキー、思い出作りの為に便利な宿として、品質の良いものを目指していましたが、思うことがあって、「天然食材やオーガニック食材を無添加で調理した体に良い食事や森に囲まれて森林浴も楽しめる源泉かけ流しの天然温泉など白山の大自然の恵みに癒され、元気になって、明日からまた頑張ろうと思える宿」という方向に改めました。利用したお客様に元気になってもらうことこそが私たちが事業として行う社会貢献であり、これでお客様に感謝され、指示されるからこそ、私たちの存在意義があるのだと認識し直しました。その上で、この恵まれた自然環境を活かす昔ながらの農業や林業にも取り組み、持続可能な営みを6次産業化するというSDGsな取り組みを様々行ってきました。

そして今回、サウナを調べていくうちに、私たちが目指し、歩んでいる方向性にあまりにも合致するのでびっくりしたのです。自然エネルギーで熱を作り、ロウリュで香りに癒されつつ、自然な成分を取り込み、清らかな天然水で体を冷やしつつ、ミネラルなど有用な成分を肌から吸収し、外気浴でマイナスイオンを浴びながら全身がととのい、お布団に入って、ぐっすり休み、元気になる。当初、サウナを町中での娯楽やレジャーの一つだと捉えていましたが、つまり、サウナとは「薬品や施術を用いず、体を熱したり冷やしたりすることで、人体に備わっている身体の恒常機能を活発にし、蓄積した心身の疲労を除去し、身体を回復させることを自身で行う、いわば、自然療法のようなもの」と言えるのではないでしょうか?

これで心身ともに元気になり、「明日からまた頑張ろうー!」と身体の奥底からエネルギーが湧いてくる。こうなってくれたら、それこそが私たちの本望です。あくまでもお客様を癒すのは白山の大自然の恵みであって、私たちはそのための場所や設備の提供、お世話を行うというものです。サウナ事業はまさにその核と言えるものになり得ると今は捉えています。

しかも、それに要するものは薪を使った自然エネルギーによる熱と樹木から頂いた蒸留水、白山の山頂から流れくる伏流水、森が作る新鮮な酸素とマイナスイオンの外気浴といった、全てが白山の大自然から得られるエコでSDGsなものばかり。町中での娯楽・レジャーという考えはもう遠い彼方に吹っ飛んでしまいました。

ところがです。ここで新たな疑問が湧いてきたのです。

現在の日本では「サウナに入るか?」と聞かれるとほとんどの方は入ると答えます。しかし、「水風呂は?」と聞かれるとほとんどの方は「あれは苦手だ」と答えます。「外気浴はする?」と聞くと、ほとんどの方が「それって何?」と尋ねてきます。それもそのはず、現在の日本で水風呂にも入ってサウナを好んで利用する方は十人に一人ほどでしょう。サウナにはこれだけ素晴らしい効果があるにもかかわらず、サウナをちゃんとした効果が得られる形で利用している方は日本の全人口の1割にも満たないのです。対して、温泉は誰もが好きで、みんなが利用します。では、何故、そうなのでしょうか?

おそらく、サウナに入った後に、ちゃんと水風呂に入り、その後、外気浴まで行ったことがある人が少ないことと、それらを行うことにより、とても良い効果を得られるという事が知られていない、もしくは知っていても自身の身体を通して実感するまでには至ってない、という事ではないかと思います。

私たちも今やっと、それを知るに至りました。これも温泉が来なくなったという事がきっかけです。温泉が来ていたら、そんなことも知る由もなく、一生過ぎてたかもしれません。そんな意味において、私たちは温泉が来なくなったという、どう考えあぐねても、私たちにとって悲劇的なこの現実も肯定的に捉えることも出来るのではないかと考え始めています。

今、私たちはこのサウナの素晴らしさを一人でも多くの方に知って頂き、知るだけでなく、実際に利用し、体験して頂くことにより、その素晴らしさをご自身の身体をもって、認識して頂き、繰り返し、サウナを利用することにより、心身の疲れを癒し、より多くの深い睡眠を得て、心身ともに元気になり、仕事や日々の生活の質が上がることで、皆さんが幸せになることが出来るのではないかと思い始めました。

そんなこんなで私共はサウナに全力で取り組むことになりました。正直なところ、当初は所詮、サウナなんて、といった感じでした。それがサウナのことを調べて、知れば知るほど、サウナは素晴らしいものだと分かりました。極めて、自然なもので構成され、自然な形で人々を元気にする、それも身体だけでなく、現代の人類が恒常的に抱えることになった脳の疲れをも取るという現代の救世主的な療法ともいえるものであるのに、それを知らずにこのサウナの恩恵にあずかっている人はまだ少数でしかない。そこへ、私たちがサウナを行うのにあたって、素晴らしい地の利を得ており、白山の大自然の恵みからアドバンテージを授かっているんだと気付かされることになり、大きな意義を感じつつ、今では私達がサウナをやらなくてどうする、という気持ちになりました。

私たちはこのサウナ施設に名前をもうけました。単にホテルの浴室に付属で付いているサウナという感じではなく、このサウナをそれ単体で捉えて欲しいと思ったからです。ホテルを利用することがなくても、この素晴らしいサウナだけを利用して頂くだけでも良いので一人でも多くの方に使ってもらいたい、という思いからでした。あまりサウナらしくない名前かもしれませんが、「山紫水明」と命名しました。この「山紫水明」は 自然の風景が清浄で美しいことを意味します。太陽の光の中で山は紫にかすみ、川は澄みきって美しい様からできた言葉だそうです。 また、そうした自然の風景を「美しい」と感じることのできる心を表すこともあるそうです。私たちのサウナは白山のこの美しい自然が織りなすものです。白山国立公園の大自然の恵みを享受できるサウナを表すのにピッタリな名前だと思ってます。

サウナを運営していて気が付いたのですが、特にこの山紫水明は大自然の豊かな環境にもうけられていますので、特に外気浴の際に四季の移ろいをじかに感じられます。春は新緑がまぶしく、草木が芽吹く香りを感じながら、ほのぼのとした空気に包まれます。梅雨時には雨に打たれることもできます。夏になると、緑も深まり深緑となり、夏の太陽のまぶしい光が注ぎます。秋になると紅葉が映える中、虫の音が響き、秋風が肌をなでるでしょう。冬には一面銀世界となり、雪の壁が立ちはだかり、凛とした空気が感じられるでしょう。

更には自然の情景は一日の時間帯でも大きく変化し、それぞれの時間帯での自然環境の違いを味わうことが出来ます。朝には木々の合間から朝日が差し込み、小鳥のさえずりが響き渡ります。日中は日が高くなり、明るい日差しが注ぎます。夕方には空が紅く染まり、虫の音が聞こえてくるでしょう。夜にはフクロウが鳴き、虫の音が響き、木々も闇に溶け込みます。

四季それぞれの風情が感じられ、朝昼晩の自然の情景を愛でるのが、自然派サウナ山紫水明の外気浴の醍醐味ではないかと思います。

山紫水明はこの恵まれた自然環境に甘えるだけでなく、アウフグースにも取り組んでいきたいと思っております。アウフグースは日本では【熱波】とも呼ばれるサウナ室内での人的サービスのことでタオルや団扇などでサウナ室内の空気を仰ぐことで温度の偏りを解消したり、直接、利用者に向けて風を送ることで熱気を伝え、体感温度を上げるなどを行います。サウナはフィンランドが発祥ですが、それがドイツに伝わり、ドイツでアウフグースは生れました。フィンランドではロウリュはしても、アウフグースは基本的には行いません。アウフグースを行う人を【アウフギーサー】と呼び、日本では【熱波師】と呼んだりもします。

山紫水明のプレオープンイベントに【北陸アウフグースチーム】の皆さんが激励に駆けつけて下さいました。その際にチームの皆さんそれぞれに仰いで頂く贅沢な機会を頂きましたが、とても感動しました。正直、単に熱い風が来るだけだと思っていたのですが、次元が違ってました。それも一人一人、風が違うのです。様々な風を起こし、サウナ室内は一気に別世界へと変わるのです。こうまで変わるのかとびっくりしました。それもとても気持ちの良い風で体に心地よく熱が届くを感じます。これもこの度のサウナブームの立役者だと納得しました。風を自在に操るアウフギーサーの皆さんの仰ぐ姿はとてもカッコよく、私には「舞」を踊っているかのように見えました。「風には感情が乗る」などと話をしながら、風を送ってくるアウフギーサーの皆さんが「舞」を舞うのを見ながら、アウフグースは真心までもが届く一つのコミュニケーションを伴ったサウナ特有の「おもてなし」であるとも感じました。

今後、間違いなく、サウナブームの中心で、このアウフギーサーの皆さんがスポットを浴びるようになると思います。その個性的なサウナだけでななく、そのアウフギーサーさんの風、そして人となりを求めて、人々が動く時代が来るのではないかと思います。それも遠路はるばる、全国津々浦々まで。私達もサウナを利用する人々の心に暖かい火がともるようなサービスを目指して、取り組んでいきたいと思っております。先だって、私どものスタッフの一人が北陸アウフグースチームの皆さんの好意で練習会に参加させて頂きました。その際に五塔熱子さんというアウフグースの第一人者の方が指導に来られており、直に指導を受ける機会を頂けました。現在は鳥取県に移住し、地方からサウナを広める活動を行っておられるとのことですが、このような方々の存在が今後のサウナをますます面白くしていき、もっと多くの方がサウナの良さを理解し、サウナの恩恵を受ける方が増えていくと思います。

私たちが自然派サウナ山紫水明で目指すのは、大自然の恵みを活かした本格的なフィンランド式サウナがベースとなりますが、そのフィンランド式サウナに欠かせないものがあります。それが【ヴィヒタ】です。(ヴァスタ、ヴェーニク、サウナウィスクと呼ぶところもあります。)ヴィヒタは白樺の小枝を束ねた道具のことです。フィンランドのサウナではロウリュで火照った体をこのヴィヒタで叩くのです。 白樺の清涼な香りが広がり、豊富なミネラル分やアミノ酸が経皮から吸収されます。そして何より、叩くことによる刺激で血行が促進され、疲労物質の排出が高まり、体の疲れが軽減し、肌も活性化します。ロウリュをする際に水の入った桶にこのヴィヒタを浸し、水浸しになったヴィヒタでロウリュをして、白樺の香りをサウナ室に広げたりも出来ます。

このヴィヒタはフィンランドでは自分自身で体を叩いて使用しますが、それが他の国で素晴らしい発展を遂げました。それがリトアニアで生まれた【ウィスキング】です。もはや、施術と言っても良いのかもしれません。ウィスクとはホウキとかはたくという意味で、ウィスキングとはサウナ室内のベッドの上で横たわっている人に対してヴィヒタで身体を叩いたり押し当てたりするリラクゼーションサービスのことです。血行促進、心身のリラックス、お肌の抗菌作用などの効果があるとのことですが、何よりも素晴らしい香りに包まれて、とても気持ち良いもの、というよりも次元を超えた極上の気持ちよさが味わえるものらしいのです。私自身がまだ体験したことがないので、このように書くしかないのですが、とにかく、素晴らしいと絶賛されているようです。

このウィスキングも使用するのは天然の枝葉と水だけです。これもまさしく大自然の恵みを享受する一つの手法です。それも特殊な薬物や特殊な科学技術、特殊な機械装置などを用いることはありません。極めてエコでSDGsなものであり、それだけで人々に素晴らしい癒しを提供できるもののようです。私達のコンセプトに素晴らしく合致するものでありますので、是非とも取り組んでいけたらと思っております。まさにサウナでおもてなしといったものかと思います。

ここら辺はあいにくと白樺は自生しておりませんが、ロシアなどでは白樺だけでなく、様々な樹木の枝葉を使っており、柏(カシ)、イラクサ、リンデン(ライム)、ヤマナラシ、菩提樹、もみ、ジュニパー、竹、ナナカマド、カエデ、ハーブ、メープル、りんご、さくらんぼ、楢、ヘーゼル、ジャスミン、ネトル等、様々な樹木の枝葉で楽しんでいるようです。ここら辺で自生しているものもありますし、これ以外のものも試しながら、それぞれの樹木の特性を試しつつ、模索していけたら面白いのではないかなと思っております。

自然環境だけでなく、そこに人のサービスが加わることでサウナは一味違ったものになると思っております。他に水風呂にバラを浮かべてのバラ風呂や雪を放り込んで流氷のようにして、フィンランドのアヴァントを再現するなど、新たな取り組みに挑戦していきたいと今からワクワクしております

このような素晴らしいサウナが出来た今、私たちは一人でも多くの方にこの素晴らしさを知って、体感して頂ければと思っております。これまで町中のサウナしかご利用になられてない方には、この山紫水明は新感覚のサウナになるのかもしれません。この白山の大自然の恵みで癒されるナチュラルな自然派サウナの良さを実感して頂き、これも一つのサウナのスタイルだと認識して頂き、いろいろなサウナを利用する際の選択肢の一つして頂けたらと思います。

サウナも昨今は様々なスタイルのものが出てきています。一様にサウナと呼ぶのではなく、それぞれのスタイルをもとにジャンル分けが成されても良いのかもしれませんね。

日本のサウナは世界の様々なスタイルを吸収し、独自の進化を遂げているようです。将来的には世界の人々が温泉大国である日本の温泉だけではなく、進化した様々な日本のサウナを楽しみに来日するようになる日も近いのかもしれません。

サウナに入ると人々は心身の状態が向上し、気持ちが広く大きくなります。こんな素晴らしいサウナをもっと世界の多くの人々に利用してもらえるように日本も貢献できるのかもしれません。世界にはまだまだサウナの恩恵を得ていない人たちが沢山存在します。この素晴らしいサウナ文化の良さを多くの人に知ってもらい、サウナが広まり、多くの方がサウナを利用して、元気になり、仕事や生活の質が向上し、その結果、幸せになると、気持ちに余裕が生まれ、もしかしたら、世界の平和に繋がるのかもしれませんね。サウナで世界の平和に貢献出来る。もしかしたら、そんなことも夢ではないかもしれませんね!

あとがき

当初、サウナを始めようと思った際に他のサウナ施設と比べてしまい、羨んだり、ライバル視したり、妬んだりするようなこともありました。しかし、サウナの良さを一人でも多くの方に伝えたいという思いになった今、逆に他のサウナ施設の皆様と手を取り合い、共に協力し合いながら、取り組んでいけたらと願うようになりました。

温泉の「湯巡り」を楽しむ方が多くいらっしゃいます。サウナでも「サ巡り」と称して、いろんなサウナ施設のそれぞれの特色を楽しみながら、巡ってもらえると良いなと思っています。北陸三県の素晴らしいサウナ施設の皆様とサ巡りの広域連携事業なども行えたら面白いのではないかと思います。

サウナの後に食べる食事を特に「サ飯」と言って、各サウナ施設での食事や施設周辺の飲食店の食事を紹介することも盛んに行われています。もともとサウナは地元の近くの行きつけのサウナに通うものだったかと思います。それが今は全国の特色ある素晴らしいサウナを求めて旅をする方が増えており、更には現地のサ飯も楽しみながら旅をするのを「サ旅」と言います。

高品質で特色あるサウナを求めて、現地を訪ね、サ巡りをしながら、観光も楽しみ、現地の人や旅人との出会いに喜び、サ飯と称した、その土地ならではの地物の食材や名物料理に舌鼓を打つ。もはやサウナはその地域のおもてなしの一つと言っても良いかもしれません。その素晴らしいサウナを求めて、地元からだけでなく、全国から人が訪れる。サウナはその地域の誇りのようなものになり得るでしょう。

祖父が6年がかりで開発し、地域の皆で作り上げ、亡き母が湯の道よ永久にという本を出してまで、永続を願った大切な温泉が来なくなったという最悪の悲劇から、最高の幸運へと転ずることを願いながら、他のサウナ施設の皆様と共に、本当に微力ではありますが、サウナの良さを伝える伝道師のような活動をさせて頂けたらこの上ないと今は思っています。

そんなこんなで今に至りますが、いずれにしても、大自然の恵みで癒されるサウナはとても気持ちが良いもので、ご利用頂いた皆様は口々に「最高」だとおっしゃって下さいます。私達はこれまでもサービス業に懸命に励んできましたが、なかなかこの「最高」という言葉を頂けることはそうそう多くはありません。それがこのサウナにおいては、本当にこの言葉を良く聞かせて頂けるのです。私たちにとっても、これ以上の喜びは他にはありません。是非、私たちがサウナの良さを広めていくにあたり、この山紫水明が皆様に大いに利用され、たくさんの皆様がととのい、そして元気になって、また頑張れることで結果に結びつき、皆んなの未来が明るくなることを、この霊峰白山のふもとにて、切に祈っております。

サウナ用語 アルファベット表記

ロウリュ〈löyly

ウィスキング〈Whisking

ヴィヒタ〈Vichta

ヴァスタ〈Vasta

ヴェーニク〈venchik

サウナウィスク〈Sauna whisk

アウフグース〈aufguss

アウフギーサー〈aufgiesser

アヴァント〈avanto